1.目的
身の周りにある電化製品や実験装置などは、100Vの交流電源でより電力を得て作動している。しかしながら、これらの装置は直流電源で作動するので、交流を直流に変換してからしなければならない。このような変換回路は我々が使う製品に組み込まれている。
上記のことを踏まえた上で、変換回路を用いて交流から直流に変換をオシロスコープの波形を見て確認する。さらに変換回路に使われている主要電気回路部品とホイーストンブリッジ回路の役割や性質を理解する。
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2.ホイーストンブリッジ回路
(T)実験操作
(1)電源スイッチS1をオフにする。
(2)抵抗Pの切り替えスイッチを中央の
1000[Ω]にする。
(3)テスターの端子を基板上のG1とG2
に差し込む。(図1ではG1とG2は、
aとbの位置である)
(4)未知抵抗Xを1つ選んで、基盤上のT1
とT2に差し込む。(図1ではT1とT2
は、aとdの位置である)
(5)テスターのロータリースイッチをmAに
セットする。
(6)電源スイッチをオンにする。
(7)テスターの電流値がゼロになるように可変抵抗Rを調節する。
(8)もしRを調節しても電流値がゼロにならなければ、データシートに“測定不能”と書いてS2を、100[Ω]及び10000(10k) [Ω]に切り替えて、再び(7)の操作を繰り返す。
(9)mAレンジで電流がゼロになったら、テスターのロータリースイッチをμAのレンジに切り替えて、Rを調節して電流値をゼロにする。
(10)電流値がゼロになったときのRの抵抗値を読み取る。
(11)3種類の異なる抵抗値の抵抗Rについて、(7)〜(10)の操作を繰り返し、μAレンジで電流値がゼロになったときのRの値を読み取る。
(12)以上の操作を繰り返して、未知抵抗X1本について、異なる3つの抵抗Pを使って測定をする測定が終わったら、S1をオフにしてから抵抗の取り外しを行う。
(13) (4)〜(12)の操作を繰り返して、5本の未知抵抗Xすべてを測定し、表にする
(14)最後に、テスターの抵抗値測定モードを使い、5本の未知抵抗Xの抵抗値を測定して、(13)で作成した表にまとめる。
(U)結果
実験で測定した値を以下の表1にまとめた。測定したPとQから未知抵抗Xの抵抗値を算出した方法は以下の式である。この式は容易に導出できる。
(1)
ただし、今回の実験ではQの抵抗一定の抵抗値1000[Ω]である。
表1 未知抵抗Xの測定
X (No.) |
P [Ω] |
R [Ω] |
X(実験値) [Ω] |
X(実測値) [Ω] |
|
C |
100 |
|
272
|
2.72×10 |
|
1000 |
|
27
|
2.7 ×10 |
27.3 |
|
10000 |
|
3
|
3 ×10
|
|
|
F |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
|
1000 |
|
266 |
2.66×102 |
269.1 |
|
10000 |
|
28 |
2.8 ×102 |
|
|
G |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
|
1000 |
|
測定不能 |
測定不能 |
5.59×103 |
|
10000 |
|
555 |
5.55×103 |
|
|
H |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
|
1000 |
|
測定不能 |
測定不能 |
2.981×103 |
|
10000 |
|
294
|
2.94×103 |
|
|
I |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
|
1000 |
|
193
|
1.93×102 |
198.0 |
|
10000 |
|
19
|
1.9 ×102 |
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(V)考察
3種の異なる抵抗値のPを使って、未知抵抗Xの抵抗値を3種測定できたデータはCしかない。しかし、2種までの抵抗値を算出できたデータは2つあるのでそれらの値から考察を行う。
Pの抵抗値が大きくなると、可変させるRの抵抗値が小さくなり、測定できる抵抗値の桁数も小さくなっている。これは可変抵抗Rの目盛りの最小の位が1であるためである。Pの抵抗値が小さいと、測定できるRの値が大きくなり桁数を多くおれるので、有効数字が増えて測定精度が高くなると考えられる。また (1)式より、XとQが一定と考えると、PとRは反比例の関係にあることがわかる。可変抵抗Rの測定できる桁の範囲内であれば、Pが小さければRは大きくなるので、測定できる桁数が多くなり測定精度は高くなる。
ここで、P,Q,Rの抵抗値をどのような値にすれば、Xの値の算出精度が上がるか考える。まず、抵抗器の精度誤差が1%とする。
可変抵抗Rの可変可能な範囲は1〜999[Ω]である。この事から、Xを算出するのに精度を高くするには、Rの値を3桁にするのが最も良いと考えられる。このときに測定する未知抵抗Xの抵抗の大きさにもよるが、電圧Eを一定にした場合、Qの値をある程度小さくした方が測定の感度は上がると考えられる。Qの抵抗を小さくし過ぎると、発熱やリード線抵抗の誤差に影響されてしまうので、必ずしもQの抵抗値が小さいほどいいとはいえない。
3.サーミスタ
(T)実験操作
(1)サーミスタから出ている2本の端子を、ブリッジ回路基板上のT1とT2に差し込む。
(2)サーミスタを恒温層に入れ、恒温槽の温度を30℃に設定する。
(3)恒温槽の温度が一定になったら、ブリッジ回路を使ってサーミスタの抵抗値を測定する。切り替え抵抗Pは測定できるすべてのレンジについて行う。
(4)30〜70℃の間を10℃間隔で(2)と(3)の操作を繰り返して、各温度での抵抗値を測定する。
(5)70℃の測定を終了したら、サーミスタを氷水で冷却して0℃における抵抗値を測定する。
(6)S1をオフにしてサーミスタをブリッジ回路から外し、変わりに用意してある抵抗器を取り付ける。
(7)70℃と0℃における抵抗値をブリッジ回路と用いて測定する。
(8)すべての測定が終了したら、S1をオフにして抵抗器を外し、恒温槽の電源もオフにする。
(U)結果
実験で測定した値を以下の表2と表3にまとめた。
表2 サーミスタ
温度
[℃] |
P[Ω] |
R [Ω] |
抵抗値 [Ω] |
|
0 (0) |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
1000 |
|
506
|
5.06×102 |
|
10000 |
|
52
|
5.2×102 |
|
30 (29.8) |
100 |
|
測定不能 |
測定不能 |
1000 |
|
182
|
1.82×102 |
|
10000 |
|
19
|
1.9 ×102 |
|
40 (40.6) |
100 |
|
975
|
9.75×10 |
1000 |
|
130
|
1.30×102 |
|
10000 |
|
13
|
1.3 ×102 |
|
50 (50.6) |
100 |
|
729
|
7.29×10 |
1000 |
|
94
|
9.4 ×10 |
|
10000 |
|
10
|
1.0 ×102 |
|
60 (59.8) |
100 |
|
566
|
5.66×10 |
1000 |
|
72
|
7.2 ×10 |
|
10000 |
|
8
|
8 ×10 |
|
70 (69.4) |
100 |
|
444
|
4.44×10 |
1000 |
|
55 |
5.5 ×10 |
|
10000 |
|
6 |
6 ×10 |
表3 抵抗器
温度
[℃] |
P[Ω] |
R [Ω] |
抵抗値 [Ω] |
|
0 (0) |
100 |
|
994 |
9.94×10 |
1000 |
|
100 |
1.00×102 |
|
10000 |
|
11 |
1.1 ×102
|
|
70 (69.4) |
100 |
|
1000 |
1.000×102 |
1000 |
|
100 |
1.00 ×102
|
|
10000 |
|
10 |
1.0 ×102
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図1 サーミスタと温度の関係
サーミスタに以下の関係があるので、近似曲線は指数近似で算出した。そのときの平均二乗誤差を表4にまとめた。
R = Ro・exp{B(1/t−1/To)} (2)
R:温度T(K)における抵抗値
Ro:温度To(K)における抵抗値
B:定数でその単位は(K)
表4 平均二乗誤差
P [Ω] |
100 |
1000 |
10000 |
平均二乗誤差 |
0.999 |
0.9984 |
0.9955 |
(V)考察
サーミスタと抵抗器との違いを表2と表3を比べて考察する。
サーミスタは抵抗Pの値に関係なく、温度が上昇するにつれて抵抗値が減少 する傾向がある。それは上記の(2)式からもわかる。しかし、抵抗器は温度が上昇すると抵抗値が減少するようである。これは測定精度が最もいい、Pが100[Ω]の時でしか観測することが出来なかった。なぜPが100Ωの時、精度がいいと言えるかはホイーストンブリッジの考察で記述した通りである。さらに、図1での平均二乗誤差が100Ωのときが最も1.000に近いので精度が最もいいと考えられる。温度上昇に伴い抵抗値も上がるという関係は抵抗器がオーム抵抗であるためである。抵抗率の関係を書きに示す。
ρ=ρ0(1+αt) (3)
ここでは、ρはt℃の抵抗率[Ω・m]、ρ0は0℃の抵抗率[Ω・m]、αは温度上昇1[K]あたりの抵抗率の増加の割合[1/k]である。
また、サーミスタはダイオードの一種なので、非オーム抵抗である。
4.電源回路
(T)実験操作
(1)
電源スイッチS1がオフになっていることを確認する。
(2)
オシロスコープのジャックを基板上のターミナルT1とT2に差し込む。
(3)
電源回路のコンセントを実験台上のテーブルタップに差し込む。
(4)
オシロスコープのV.ATTがGND、SWEEP
RANGE(Hz)が10-100になっている事を確認する。
(5)
オシロスコープの電源をオンにする。
(6)
POSITOONつまみをゆっくり回して、輝線を垂直軸の中央に合わせる。
(7)
V.ATTをGNDから1/100に動かす。
(8)
回路の電源スイッチS1をオンにする。波形を観察しやすくするために、POSITIONつまみをゆっくり回して、波の頂点が垂直軸に重なるようにする。
(9)
この時の波形をグラフ用紙に書き取る。
(10) 電源スイッチS1をオフにする。
(11) T1とT2に差し込んだオシロスコープのジャックをゆっくり外し、T3とT4に差し込む。オシロスコープのジャックとターミナルの色が同じになるようにする。
(12) 電源スイッチS1をオンにする。
(13) 直流部分を表示させるために、DC-AC切り替えスイッチをDCに切り替える。
(14) この時の波形をグラフ用紙に書き取る。
(15) 電源スイッチS1をオフにする。
(16) T3とT4に差し込んだオシロスコープのジャックをゆっくり外し、T5とT6に差し込む。オシロスコープのジャックとターミナルの色が同じになるようにする。
(17) 平滑回路のコンデンサーのスイッチS2とS3をオフにする。
(18) 電源スイッチS1をオンにする。
(19) この時の波形をグラフ用紙に書き取る。
(20) 平滑回路の動作確認をする。S2をオンにする。この状態で回路に100μFのコンデンサーが接続されたことになる。
(21) この時の波形をグラフ用紙に書き取る。
(22) コンデンサーの容量を大きくする。コンデンサーのスイッチS2をオフにして、S3をオンにする。この状態で回路に2200μFのコンデンサーが接続されたことになる。
(23) この時の波形をグラフ用紙に書き取る。
(24) すべての実験が終了したので、オシロスコープの電源をオフにし、さらに電源スイッチS1もオフにする。コンセントからプラグを抜く。
(U)結果と考察
(1) 実験で観察されたトランスの二次側波形、半波整流回路の直流波形、全波整流回路の直流波形、平滑回路の直流波形(2つの容量が異なるコンデンサー)の計5つの波形をグラフにまとめた。それらのグラフは最後のページに示す。また、各素子と波形との関係は以下の通りである。
○トランス 電圧を変圧する(降圧する)。波形の振り幅が小さくなる。
○ダイオード 電流を一方向へとながし、その逆方向へは電流を流さない。
波形は、マイナス部分またはプラス部分のみ観察される。
○コンデンサー 電気の導体に多量の電荷を蓄積できる装置。波形はコンデンサーに溜まった電荷で、交流要素(負の電圧)が少なくなる。
○ブリッジダイオード 4個のダイオードによってブリッジが組まれた整流回路。負荷抵抗部分の電流の流れる向きは正負共の同じ。
波形は負の領域を時間軸で折り返した形になる
(2)図2(b)の回路で電流の流れを交流波形の1サイクルについて書く。
注意すべき点を箇条書きにする。
@ダイオードは▼印が細くなる方にしか電流は流れない。
A電流は電位の高い方には流れることは出来ない。
B交流波形1サイクルでは、電流の流れる向き(電圧)は正と負の2つある。
図2 電圧が正の場合
図3 電圧が負の場合
5.スイッチング回路
(T)実験操作
可変抵抗R2を変えることで出力電圧を0.5[V]刻みで変えながら、その時のcycle時間に対するon時間の値を図7のようにまとめる。
注)R2はテキスト12ページの図6中の抵抗である。また、図7はテキスト13ページのものである。
(U)結果
測定された結果を以下の表5に示す。また、電圧とon幅/cycle幅の関係を示したグラフは次のページの図4に示す。
表5 on幅とoff幅とその関係値
電圧 [V] |
on幅 [mm] |
off幅 [mm] |
cycle幅 [mm] |
on幅/cycle幅 |
0.5 |
3 |
45 |
48 |
0.063 |
1.0 |
3 |
23 |
26 |
0.115 |
1.5 |
3 |
12 |
15 |
0.200 |
2.0 |
3 |
9 |
12 |
0.250 |
2.5 |
3 |
5 |
8 |
0.375 |
3.0 |
3 |
4 |
7 |
0.429 |
3.5 |
3 |
3 |
6 |
0.500 |
4.0 |
3 |
2 |
5 |
0.600 |
4.5 |
3 |
1 |
4 |
0.750 |
6.参考文献
元岡達著:現代 電気電子工学の基礎実験、オーム社、1981
東京工業大学工学部附属工業高校 科学技術研究会編:科学技術基礎(下)、2000